第四話 対面












晴れ晴れとした天気。
鳥たちの声が聞こえてくる。





だが、俺の心の中は嵐が来ていた。






・・・・・・・大丈夫、大丈夫だ俺。





昨日あれほどまでに礼儀正しい態度と言動の練習をしてたんだ。大丈夫に決まってる。
それに、頬が筋肉痛になるほどまでに上品な笑みの作り方を考えたんだ。
族長に失礼なことはしないはず。・・・・・多分





俺が今居るのは大樹の館の内部。
木の廊下の椅子に座っている。





俺は今日、ここには目的と武器を授けてもらうため来ていた。しかし、準備があるのでここに居るようにと指示されたので待っているのである。





周りに誰も居ないことを確認し、椅子をちょっと浅く座って上を向きあくびをした。





眠くて眠くてしょうがない。
というより暇だ。





誰も見てないから姿勢を崩してもいいよな。





身体をよじり、椅子の背もたれに腕をかける。
ぼけぇーとしながら壊れた壁から見える風景をみた。





人も家もちっぽける見えるほど高い。
地面から見ても葉っぱの部分が見えなかった大きな木がここから見ると葉っぱが見えた。





大樹の館は森の木で一番太く高い木だから当たり前か・・・





大樹の館は木で作られている。
というより木の中をくり貫いて部屋を作っている感じだ。
大樹の館の木は樹齢一千年という歴史を誇っている。





森の民は木に敬意を払い、大事に扱っているのだが、
この木を育てた本人が建物にしてくれと志願したらしくこのような建物になったようだ。






「物好きだよな。こんなもん作るなんて・・・・」






正直言ってどんぐらいの時間と金を使ってここを作ったか、容易に想像できる。しかも、この大樹の館はなんと目的の旅の儀式以外使うことが無いのだ。
つまり、10年に一度しか使わないってこと。
これも、この木を育てた奴からの志願だそうだ。
ここまで行くと志願というより我侭だな。






「これを立てた奴の顔拝みたいよ。」






独り言をぼやいたら、返事が戻ってきた。






「それは無理ですよ。建設者の顔は何処にも記されていないですから。」






へぇ、そうなんだ。





・・・・・・・・?





気が付くと椅子の前にピリッとした印象がある老女が立っていた。






「ぎゃぁ」






驚きと驚きで椅子から飛び上がるよう立ち上がった。
下から見上げるように老女を見たので、まるでホラー映画のような影が顔にかかり変な恐怖を感じる。






「アルトゥル・レスタンス。準備が出来ました。目的の間へ来なさい。」






老女は冷やかな眼で俺を睨んだ後、廊下を歩いていってしまった。





・・・・聞かれたな。あの婆さんに。
絶対、俺の印象下がったな。





肩をがっくり落としながら目的の間へと向かった。





















長い廊下と階段を経て目的の間へと付いた俺。目の前にあるきめ細やかな彫刻がしてある巨大な扉の前に立ち






「アルトゥル・レスタンスです。失礼します。」






軽く頭を下げ、扉を開けた。





ギギッーと扉は壮大な音を立て、開いていく。





心臓の鼓動が全身に伝わるほど大きくなり響き、
口の中が乾き始めた。





き、緊張してる・・・・・





族長と二人っきりで合うなんて初めてだ。
一生の内多分二人っきりで族長と会うのはこれが最初で最後だろう。





ああっ!余計なこと考えるな俺。
呂律が回らなくなってくるぞ。





他の事を考えるんだ。
例えば部屋の中の雰囲気とか。





軽く下げていた頭を上げ、目線だけで部屋の周りを見渡す。





不思議・・・・?というより面白い部屋だな。
なんかこう、黒魔術でもやってそうな雰囲気って言えばいいのかな?





部屋の見た目は丸く、変な模様が描かれた布をぶら下げている円柱が壁沿いに何本も並んでいる。
それに、黄緑の煙や紫ともピンクとも言えぬ煙が部屋中に充満していた。
実はここで黒魔術とか黒ミサとかやってたりな・・・・・





なんか想像してると笑いそう。
いやいや、笑うとおかしい奴だろ俺。





すたすたと姿勢を正したまま歩き、族長の前まで行って『森の礼』をした。





『森の礼』って言うのは森の民の挨拶の一つである。





まず、両手の甲を相手に見せる。
次に指を軽く曲げ、指の間にもう片方の手の指を挟む。
そして、相手に対して頭を下げる。
この時、気をつける事が一つあって指を挟むとき絶対に左の小指が一番下にこなければならない。
これが、逆に右手の小指が一番下にしとくと相手に対して失礼に当たるそうだ。





俺は森の礼をし終えた後、足元にある四角い布に座った。





変な木が組んで前に置かれており、それを跨いだところに族長が居る。





族長は40代ぐらいで無精ひげを生やし短く切ってある髪を後ろに撫で付けていた。結構、二枚目な顔をしている。






「アルトゥル・レスタンス。
そなたは今年『目的の旅人』として森の木を出る。今日は目的の旅に必要な目的と武器を授ける。」






はい、と小さく呟き頷く。






「今から我は森神さまと語らう。そなたは心の邪心を取り除き、森神さまに心を開きなさい。」






こんな事言うと失礼だと思うんだけど
なんか言ってる事がどっかの宗教団体みたいだな。





・・・・この考えも邪心のうちに入るのか、な?






「アルトゥル・レスタンスよ。眼をつぶり静かに森神さまの声を聴け。」






あれこれ考えたが、族長に眼をつぶるよう言われたので眼をつぶった。





すると、低く地を這うような声が聞こえる。





何言ってんだ?
と思い耳を澄ましてみる。





・・・・・何語?





意味の判らない言葉が途切れなく聞こえてくる。





えっとこれ、なんていったっけ?





・・・・・たしか、ルーンだったかな?





魔法とか唱えるときに必要な言葉の一つだったはずだけど・・・・・
でも今はあまり活用性がないはず。





なぜなら、強い魔法を使うとき一分以上はルーンを唱え続けなければいけないし、かなりの集中力が必要だからだ。
でも、ルーンで魔法を唱えたほうが威力が強いけどな。





森神と話すのにこんな苦労があるのか。
こんな長い呪文唱えんだったら族長にはなりたくないな俺。





・・・・はぁ、早く呪文唱え終わんないかな。
俺眠くなりそう。





止まることのない呪文を聞きながらいろいろと考えていたがふと、あることを思った。





族長、よく息持つよなぁ。










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