第三話 目的の旅
目的の旅。
その始まりは森の民が生まれてから約30年後から始まったんだ。
その時世界はノーマルの人種『ヒュー』が戦争を起こしていた。 授業で習ったことがあるはずだけどその戦争を『四獣戦争』と呼ばれていた。
その戦争時に一人の森の民の青年と他国の人が一緒に旅したことが目的の旅の始まりだって言われている。 旅をした青年と一緒に旅した他国の人の名前とか何をしたかは未だ判らないけど、その人たちが旅したことで目的の旅が始まったみたい。
森の民の青年が10代だったことから目的の旅の対象は10代の少年少女達なんだ。けど、まとまって行動はしないんだよね。それじゃ、旅じゃなくて旅行になっちゃうから。
だからと言って、子供一人で魔物がいるところを旅させるのは危険でしょ? そのためにいるのが『旅の共』。
『旅の共』は青年と一緒に旅した他国の人の役割をしてるんだ。 一緒に旅して二人で協力して危険を乗り越える。 それが『旅の共』の役目。
『旅の共』は20歳以上の男女がなる。 どんな人と旅するかは自分の勝手だけど一年ぐらいは旅してるから一応相性のいい相手を探したほうが良いね。 仲が悪くてもいいから強い人と一緒に旅したいんだったら別に良いけどね。 あと、自分の弱点を補ってくれる相手かな。
目的の旅にはいろいろと決まりがあるんだ。 例えば、『旅の共』だって決まりの一つなんだ。 だけど、この決まりっていうのが結構大変なものなんだよ。
旅する子供たちを『目的の旅人』って言うんだけど、 『目的の旅人』が持っていい武器も決まりとして決められてるんだ。
決めるのは森神さま。
森神さまは決めると言うより授けてくれるって言ったほうが正しいのかな? 出発数日前に大樹の間で授けてくれるらしいけど・・・・・
森神さまが授けてくれた武器以外『目的の旅人』は武器を持っちゃいけないんだ。 刃物類は勿論、何かを傷つけることが可能なものは全て持ってはいけない決まりなんだ。そうすると食事も作れないから、『旅の共』がいるんだけどさ
そのほかにも、武器を授けられるとき一緒に授かる仮面も持っていく必要があるんだ。その仮面はいろいろな場面で着けないといけない。 もうひとつ、これは森の民の族長からもらうんだけど緑のスカーフを体のどこか、他の人たちから見れる場所に着けておかないといけない。
結構、面倒な決まりが多いだろ?
んで、もっとも重大な決まりが『目的』なんだ。
『目的の旅』は目的を持って旅をするって言う意味なんだけど、 目的を持ってって簡単に言ってるけど簡単に目的なんて考えつかないだろ? だから、族長が森神に語りかけてそれぞれの『目的』を貰うんだ。
例えば、最も高い山の頂上から花を摘んでくるとか。
こういった目的を貰うんだ。 でも、例えで言ったのは簡単すぎて絶対に目的の中には入らないな。
それで、この目的は『旅の共』以外の人には話しちゃいけないんだ。 どうしてだが、知らないけど話しちゃいけないんだ。
しかも、この目的が達成しないと森の木には帰れない。 厳しい旅だよね。
さっき、兄さんに言ったけど今年は僕たちの番なんだ。 目的の旅は全ての森の民が行けるようにしてるから、10年に一度に行われている。
それが、今年なんだ。
僕は15歳で兄さんも16歳だから目的の旅の対象なんだ。
これで、目的の旅の大体のことを説明し終わった。 あとは周りの感じでどう行動するか考えてね。以上。
長い、長い説明をし終えたセヴランは軽く息を吐いた後、水をがぶ飲みした。
「・・・・・・・」
はぁ、長い話だったが一応は理解できた。 しかし、こんな旅があるなんて知らなかったな。
「兄さん、理解できた?」
「できた、できた。ありがとうセヴラン。」
へらへら、と笑い軽く頭を下げた。
「それならよかった。」
ちょっと安心したように笑うセヴラン。
だが、何個か気になることがある。
「セヴラン?もしさ、目的が達成できずにいたらさずっと森の木に戻ること出来ないのか?」
さっきの説明だと目的を達成するまで家には戻れない。 そうすると、どうしても達成できない目的を突きつけられたら一生家に帰れないことになるじゃないか。
俺、木々を操る力を持っていないから、たとえ優秀な旅の共と一緒でも目的を達成できるのか・・・・心配だ。
そんな俺の心境を弟は勘づいたらしく安心させるような口調で
「今まで一千年の間一生森の木に帰れなかった人はいなかったから大丈夫だよ。」
「だけど、俺は森の民歴史上初めて木々を操る力を授けられなかったんだけど・・・・・・」
先程の説明からどうしても、ネガティブな考え方しか出来ない。 もし、無茶苦茶な目的を言われたらどうしよう?そればっかりが頭の中で回る。 俺は臆病者ではないがやはり一生家に帰れないのは怖い。
「兄さん大丈夫!ちょっと辛いこともあるけど大体の目的は頑張れば達成できる目的だからっ!!」
俺を元気付けようとセヴランは元気よく言いニコニコと笑った。
そ、そうだよな。 いくらなんでも達成できない不可能な目的なんて貰わないよな。 森神が俺に木々を操る力を授けなくても俺が家に帰れないように仕向けるほど酷い奴じゃないか。
「そうだな。達成できない目的なんてないんだからな。はははっ、ははははは。」
乾いた笑い声を上げる。
だが、心の中でどこか不安がある。 目的を達成できるかどうかの不安。
「兄さん、それで明日大樹の間に行って武器と目的を授けて貰うからね。」
「あ、明日?」
も、もう少し心を整理する時間がほしい。 つうか、急すぎる。
「うん、武器と目的の授かるのは出発の数日前だから。」
「お、俺聞いてないぞ。」
「本当に先生の話とか学校で聞いてないでしょ?一週間前ぐらいに大樹の間にいつ行くか聞いてるはずだよ。」
ああっ、そういやそんなこと前に言ってたような気がする。 でも、その時思いっきり居眠りしてたっけ。
「明日の午後兄さんは大樹の間に行くはずだよ。ちゃんと礼服を着てただし礼儀をしてね。」
「ヘ、へい」
「それと族長が居るんだから森神さまに対しても反抗的な態度を表さない。族長が言った言いつけを守って森神さまに敬意を表すんだよ。」
「わかった・・・・」
出来るか俺。 いっつも反抗している森神に対し敬意を表せるか?
俺だってもうガキじゃないんだから少しは我慢して敬意できる・・・・・はず。
明日、作り笑いのし過ぎで頬が痛くなりそう。
でも、旅に出ればネオたちの嫌がらせも受けないし他の奴からハズシなんて呼ばれることもなくなる。 そのことがちょっとだけ旅に対する不安を軽くさせた。
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